革靴の世界には、素材や製法だけでなく「色」で個性を表現する文化があります。その代表的な技法が「パティーヌ(patine)」です。既製のカラーにはない奥行きやニュアンスを生み出し、一足ごとに異なる表情を持たせることができるため、近年ますます注目を集めています。本記事では、パティーヌの意味や技法、魅力について詳しく解説します。

パティーヌとは何か
パティーヌとは、革の表面に染料やクリームを重ねて着色し、グラデーションや陰影を表現する技法のことです。フランス語の「patine」は本来、金属や革が時間の経過によって帯びる風合いや艶を指しますが、革靴の世界では、その経年変化の美しさを意図的に再現・デザインする技術として用いられています。
また「パティーヌ」と聞いて頭に浮かぶのは、フランスのブランド「ベルルッティ」ですが、実は1980年代にオルガ・ベルルッティにより確立された革の着色、染色方法なのです。
パティーヌの工程
パティーヌはすべて手作業で行われる繊細な工程です。一般的には以下の流れで進められます。
・下地処理
革表面の汚れや油分を取り除き、染料が均一に浸透する状態を作ります。
・ベースカラーの着色
アルコール染料や水性染料を使い、土台となる色を入れます。
・重ね塗りによる表現
複数の色を重ねながら、濃淡や陰影、グラデーションを作ります。筆、布、スポンジなど道具の使い分けも仕上がりを左右します。
・仕上げ
クリームやワックスで艶を整え、色の深みと定着を高めます。
このプロセスは一点一点異なるため、同じ仕上がりは存在しません。
パティーヌの魅力
パティーヌが支持される理由は、単なる着色以上の価値を持つ点にあります。
・世界に一足だけの表情が生まれる
・革の質感や繊維の表情を活かせる
・履き手のスタイルや個性を反映できる
・履き込むことでさらに味わいが増す
既製靴をカスタムする方法としても人気が高く、オーダーシューズや高級靴ブランドの分野でも重要な表現手段となっています。
経年変化(パティナ)との違い
似た言葉に「パティナ(patina)」があります。これは革や金属が時間の経過とともに自然に変化して生まれる色味や艶を指します。
パティーヌが「人の手による表現」だとすれば、パティナは「時間が生み出す自然の美しさ」といえるでしょう。両者は異なる概念ですが、革製品の魅力を語る上で密接に関係しています。
革靴を“作品”へ変える技法
熟練の職人によるパティーヌは、革靴を単なる実用品から“作品”へと昇華させます。光によって色が揺らぎ、履き込むことでさらに深みが増していく。その変化を楽しむこと自体が、革靴文化の醍醐味でもあります。
パティーヌは、革靴を長く愛用する人ほど魅力を感じる技法です。色を重ねることで生まれる奥行きと、時間とともに深まる表情。その両方を味わえることこそが、パティーヌの最大の価値といえるでしょう。
日本版パティーヌともいえるMon Modelの千手染
「千手染」とは、Mon Modelが長年に渡る試行錯誤の末に独自に研究開発した革の染色技法で、幾重にも色を重ねて塗っていく事で独特なムラを作り出し、様々な色が混じり合う事で深みや奥行きを表現し、より芸術的な美しさを持つ風合いに革を染め上げていく技術の事です。
正確さと緻密さが求められるデリケートな技法ですので熟練の技が必要とされ、全ての「千手染」商品は手染職人達の手によって一つ一つ丁寧に染め上げられ完成します。
その塗り重ねられた色合いは大変美しく、絵画的でもあるのが最大の特徴で、印象派と呼ばれるアーティストの影響や、塗り手の人生において培われた経験、インスピレーションを受けたものが塗り方・色目に反映されており、芸術性や感性を活かした仕上がりになっています。
